【効果持続性UP】プラズマ処理の濡れ性保持方法
濡れ性を高め、接着・密着強度向上を目的に使用されているプラズマ処理。
そのプラズマ処理効果は何もしなくても時間経過と共に逓減していくのをご存じでしょうか?
効果の逓減を抑えるためには取扱いと保管方法に注意する必要があります。
本記事では、プラズマ処理材の取扱いと濡れ性保持方法について解説します。
1.プラズマ処理材の取扱いと保管方法
プラズマ処理を行うと処理表面は親水基が付与され、濡れ性が向上します。
プラズマ処理後の処理材料の取扱いにおいて、気を付ける点は下記3点です。
プラズマ処理材の取扱い注意点
- 処理面に触れない
→指紋等の付着により処理効果が著しく損なわれるため - 表面を保護する
→物理的ダメージにより親水基が削り取られるため - 清浄な環境で処理を行う
→湿気やオイルミストが付着してしまうため
処理材料を一時滞留してから後工程に移る場合は、上記の点だけでなく濡れ性の経時変化に気を付ける必要があります。経時変化は保管方法によって異なるため、長期間滞留する場合は保管方法を工夫する必要があります。
ここではポリプロピレン(PP)を例に、保管方法によって経時変化にどのような違いがあるか調査していきます。
*PPのプラズマ処理データはTough Plasma FPF20-GMを使用し測定しております。材料の種類、処理条件によって結果が異なり、処理データは数値を保証するものではございません。
保管方法による経時変化の違い
- 温度と湿度による違い
- 保管時の雰囲気ガスによる違い
*1、2は処理条件が異なります。
1.温度と湿度による違い
下記はプラズマ処理後のPPを保管する温度と湿度を5条件で分け、経時変化を測定した結果です。
温度と湿度が低いほどプラズマ処理の効果が保持されています。
2.雰囲気ガスによる違い
下記はプラズマ処理後のPPを保管する雰囲気ガスを大気保存と窒素パージ保存にした場合の経時変化です。
窒素パージ保存にした場合の方がプラズマ処理の効果が保持されています。
以上より、プラズマ処理効果は1.低温・低湿度下、2.窒素雰囲気下で保管した場合に効果持続性が高くなることが分かります。
なぜ保管方法によって経時変化が異なるのか?
結論から言うと温度上昇によって分子運動が活発になり、下記の現象がより激しく起こるため、保管方法によって経時変化が異なります。
経時変化が異なる理由
- 親水基の内部への潜り込み
- 空気中の水分子が素材表面に接触し、親水性が低下
よって、低温にすることで分子運動の活性化を防ぎ、窒素雰囲気化(低湿度)に保管し、空気中の水分子との接触を防ぐことでプラズマ処理の効果を保持することができます。
2.まとめ
プラズマ処理材の取扱い注意点と保管方法についてご理解いただけましたでしょうか?
濡れ性が初期状態に戻ることはほとんどありませんが、安定した接着強度を得るためにはプラズマ処理から後工程までの時間を極力短くするか、保管方法に気を付ける必要があります
今回はPPを例に説明させていただきましたが、プラズマ処理の経時変化は材料や保管環境によって異なります。「この材料はどうなのかな」「この保管環境で狙った濡れ性が保持できるかな」など気になる点がございましたら是非お問い合わせください。
また、株式会社FUJIでは評価テストを行っております。専門スタッフがお客様の材料や処理条件に適した処理方法をご提案させていただいておりますので、ご興味のある方はこちらよりお申込みお願いします。