【3ステップで分かる】プラズマ処理による親水化メカニズム
「親水化」とは、物質の表面が水になじみやすくなる現象です。
材料の表面を「親水化」させることで水がはじくことなく、薄く濡れ広がる状態になります。
工業的にこの現象を利用し、接着剤や塗料の密着性を向上させ剥がれにくくするのがプラズマ処理です。
しかし、プラズマ処理による「親水化」のメカニズムは分かりづらく
「プラズマ処理をすると親水化するのは知っているが実際どのような現象が起きているか分からない」との声も頂きます。
そこで、本記事ではプラズマ処理による親水化メカニズムを3ステップに分けて解説します。
1.プラズマ処理による親水化
プラズマ処理による親水化を以下3ステップで解説します。
親水化までの3ステップ
- プラズマ化による活性酸素種(酸素ラジカル)の発生
- 酸素ラジカルによる表面改質
- 水素結合による密着性向上
樹脂で親水性の低いポリプロピレン(PP)を例にプラズマ処理による親水化メカニズムを解説していきます。
1.プラズマ化による活性酸素種(酸素ラジカル)の発生
プラズマ処理による親水化は基本的に活性酸素種を使用したものが多いため、ここでは活性酸素種を利用した親水化について解説します。
*活性酸素種にはラジカル種と非ラジカル種に分けられ、ここではラジカル種を利用した親水化について説明します。
プラズマは物質の第4状態と言われ、自由電子と陽イオンが飛び回っている不安定な状態です。
酸素をプラズマ化させると酸素ラジカル(スーパーオキシド、ヒドロキシラジカル)を含む活性酸素種に変化します。
このスーパーオキシド、ヒドロキシラジカルを材料に照射することで親水化を行います。
プラズマについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
2.酸素ラジカルによる表面改質
ポリプロピレン(PP)にプラズマ処理をした事例を以下で説明します。
PPにプラズマ処理を行うと表面の高分子結合の一部が切断され、生成された酸素ラジカル(スーパーオキシド、ヒドロキシラジカル)と結合し、水酸基やカルボニル基などの極性官能基が導入されます。
このように表面のみ材料の性質を変化させることを表面改質と言います。
3.水素結合による密着性向上
酸素ラジカルによる表面改質により、PP表面に極性官能基が付与されたことで、水と水素結合が行われ水分子との親和性が高まります。
下記はプラズマ処理前後のPP表面の水接触角の違いです。親水化され、濡れ性が向上したことで接触角が95度から50度に変化したことが分かります。
また、プラズマ処理には最適条件があり、照射距離や速度により処理結果が変わります。
最適条件のプラズマ処理方法についてご興味のある方はこちらの技術資料をご覧ください。
2.まとめ
プラズマ処理による親水化メカニズムについてご理解いただけましたでしょうか?
今回はPPを例に説明しましたが、プラズマ処理の効果は材料によって異なります。
そのため、材料ごとにプラズマ処理を行い、「狙った効果があるのか?」「処理条件を満たすことができるのか?」などを評価する必要があります。
株式会社FUJIでは初回無料にて評価テストを行っております。
専門スタッフがお客様に合わせた処理方法や最適条件のご提案をさせて頂いておりますので、ご興味のある方はこちらより評価のお申込みをお願いいたします。